、その文屋と遍昭が食わせものじゃあるめえかな」
「うんにゃ違う、こりゃ確かだ。俺が現在二つの眼で、写山楼の内《なか》で見たものだ。そうして文晁がお礼としてあの蘭人にくれたものだ。そうでなくってこの俺が江戸から後を尾行《つけ》るものか。べらぼうなことをいわねえものだ」
「へん、どっちがべらぼうでえ、へんな贋物を掴みやがって」
二人はだんだんいい募った。
やがて日が暮れ夜となったが、その星ばかりの闇の中で撲り合う声が聞こえて来た。
その翌日のことである。
二、三人の百姓がやって来た。
「ヒャア、こいつあぶっ[#「ぶっ」に傍点]魂消《たまげ》た。でけえ穴が掘ってあるでねえか!」
「道標《みちしるべ》の石も仆れているのでねえか」
「この畑の踏み荒しようは。こりゃハア天狗様の仕業《しわざ》だんべえ」
百姓達は不平タラタラその大きな穴を埋め出した。
それは大変寒い日で、彼等はやがて焚火をし、
「やあここに掛け物がある」
「やあここにも掛け物がある」
「一つ二つ……五つ六つ、六つも掛け物落ってるだあよ」
「何んて穢ねえ掛け物だあ。踏みにじられてよ泥まみれになってよ」
「火にくべるがいい
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