つつまれていた」に傍点]。
「なんだえこれは壺じゃアねえか。呆れもしねえ莫迦にしていやがる。小判の箱かと思ったに。天道様も聞こえませぬ。一体どおしてくれるんだい。旅費を使って江戸くんだりから、わざわざ甲府へ来たんじゃアねえか。巫山戯《ふざけ》ているなあ、え、本当に。……だが待てよ、そうも云えねえ。これに秘密があるのかもしれねえ。形は小さい壺ながら、忽然化けて千両箱となる。なあんて奇蹟が行なわれるかもしれねえ。よしよしともかく宿へ帰り、仔細に調べることにしよう」
で、鍬を川へ投げ捨て、壺に着いている土を払うと、懐中へ納めて歩き出した。
夕飯を食べ風呂へ入り、床を取らせると女中を退けた。
それから壺を取り出した。ためつすがめつ[#「ためつすがめつ」に傍点]調べたが、何の変った所もなかった。丈三寸、周囲三寸、掌に載る小壺であった。焼にも変った所がない。ただし厳重に蓋が冠せてあって、取ろうとしてもなかなか取れない。
「つまらねえなあ。虻蜂《あぶはち》とらずだ」
小言を云いながら振って見たが、中には何にも入っていないと見え、コトリとも音はしなかった。
「一世一代の失敗かな。友蔵親分丸損か
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