州街道を足早に、甲府の方へ下る者があった。他ならぬ岡っ引の友蔵で、厳重に旅の装いをしていた。
すると、その後から見え隠れに、一人の旅人が尾行《つ》けて行った。それを友蔵は知らないらしい。
道中三日を費やして、友蔵は甲府の城下へ着いた。
旅籠へ泊った友蔵は、両掛《りょうがけ》からこっそり[#「こっそり」に傍点]地図を出し、あらためて仔細に調べ出した。
すると、隣室の間の襖が、あるかなしかに細目に開き、そこから鋭い眼が見覗《みのぞ》いた。様子を窺っているのであった。
翌日早朝友蔵は、釜無の方へ出かけて行った。忍野郷《しのぶのごう》を出外れるともう釜無の岸であった。土手に腰かけて一吹《いっぷく》した。それから四辺《あたり》を見廻したが、人の居るらしい気勢《けはい》もなかった。用意して来た鍬を提《ひっさ》げ地図を見い見い歩いて行ったのは、川の岸寄りの中洲であった。
彼は熱心に掘り出した。やがて何か鍬の先に、カチリとあたる[#「あたる」に傍点]音がした。どうやら小石ではないらしい。手を差入れて引き出して見た。土にまみれ[#「まみれ」に傍点]た小さい壺が、その指先につつまれていた[#「
前へ
次へ
全111ページ中97ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング