な。ほんとにほんとに莫迦にしていやがら」
 しかしどんなに悪口を云っても、それに答えるものさえない。自分自身が悪口を云い、自分自身が聞くばかりであった。
 夜は次第に更けまさり、家の内外ひっそり[#「ひっそり」に傍点]とした。
「考えていたって仕様がねえ。こんな晩は寝た方がいい。明日は早速ご出立だ。お花の畜生め覚えていやがれ。彼奴《あいつ》さえあんな物を持って来なけれりゃあ、こんなへマは見ねえんだ。江戸へ帰ったらあいつ[#「あいつ」に傍点]を呼び付け、みっしり[#「みっしり」に傍点]叱ってやらなけりゃならねえ」
 夜具を冠って寝てしまった。
 いわゆる丑満の時刻になった。
 と、間《あい》の襖《ふすま》が開き、何かチロチロと入って来た。それは一匹の大|鼬《いたち》であって、颯《さっ》と床間《とこのま》へ駈け上ると、壺と地図とを両手で抱え、それから後足で立ち上り、静かに隣部屋へ引返した。
 友蔵は勿論知らなかった。しかし翌日発見した。発見はしたが驚かなかった。「へん、間抜けな泥棒め、盗むものに事をかき、あんなつまらねえ物を盗みやがった」
 それで、却ってサバサバして、江戸をさして引返して
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