て、
「これは不思議! 剣気がござる!」
「ナニ剣気? ほんとかな?」安房守は眼を見張った。
「これは只事ではございません」
「お前は剣道では奥義の把持者《はじしゃ》だ。俺などよりずっと[#「ずっと」に傍点]上だ。お前がそう云うならそうかもしれない」
「これは危険がせまって居ります」
「ふうむ、そうかな。そうかもしれない」
「これは助けなければなりません」
 八郎は背後を振り返り、手を上げて門下を呼んだ。
 曲は終りに近づいてきた。

 毛脛《けずね》屋敷の床の下に、大きな地下室が出来ていた。
 この屋敷が建てられたのは、正保《しょうほ》年間のことであって、慶安謀反の一方の将軍、金井半兵衛正国《かないはんべえまさくに》がずっと[#「ずっと」に傍点]住んでいたということであった。で、恐らく地下室は、その時分に造られたものであろう。素行|山鹿甚五右衛門《やまがじんごえもん》の高弟、望月作兵衛《もちづきさくべえ》もそこに住み著述をしたということであるが、爾来幾度か住人が変わり、建物も幾度か手を入れられたが、天保《てんぽう》になって一世の剣豪、千葉周作政成の高弟、宇崎三郎が住んだことがあったが
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