どうどうと所信を貫いた。……俺は義時に則《のっと》ろうと思う。日本安全のそのためには、小の虫を殺し大の虫を助け、敢て賊子《ぞくし》に堕ちようと思う。……どだい薩長と戦って、勝てると思うのが間違いだ。いかんともしがたいは大勢だ。社会の新興勢力は、どんなことをしても抑制出来ぬ。王政維新は大勢だ。幕府から人心は離れている。それはもう旧勢力だ。利益のなくなった偶像だ。徳川の天下も二百六十年、そろそろ交替していい時だ。偶像を拝《おが》むのは惰性に過ぎない。こびり[#「こびり」に傍点]付くのは愚の話だ。新時代を逃がしてはいけない。日本を基礎にした世界主義! 国家を土台にした国際主義! これが当来の新思想だ。仏蘭西《フランス》を見ろ仏蘭西を! ナポレオン三世の奸雄《かんゆう》振のいかに恐ろしいかを見るがいい! 日本の国土を狙っているのだ。内乱に乗じて侵略し、利権を得ようと焦心《あせ》っているではないか。それだけでも内乱を止めなければならない。……第一江戸をどうするのだ。罪のない江戸の市民達を。兵戦にかけて悔いないのか。いやいやそれは絶対にいけない。江戸と市民は助けなければならない。そうして徳川の大屋
前へ 次へ
全111ページ中79ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング