聞いていた。「はああそれでは浪士どもが、集会の用に立てようため、そんな気味の悪い噂を立て、人を付近に近寄せないのだな」こう考えて来ていよいよ義哉は身の危険に戦慄《おのの》いた。
その時浪士たちは顔を寄せ合い、しばらくヒソヒソ相談したが、
「さて小堀義哉氏とやら、我々を何と覚しめすな?」琵琶師風の一人がやがて云った。
「姿はさまざまに※[#「にんべん+肖」、第4水準2−1−52]《やつ》しては居れど、浪士方と存ぜられます」
「いかにも左様、浪士でござる。……何の為の会合とおぼしめすな?」
「それはトント存じませんな」
「この図面、ご存知かな?」
琵琶師は図面を指差した。
「千代田の城の図面でござろう」
すると浪士は頷いたが、
「実は我ら千代田城へ、火を掛けようと存じましてな。それで会合をして居るのでござる」
家常茶飯事でも話すように、こう浪士はスラスラと云った。そうしてじっと[#「じっと」に傍点]眼を据えて、義哉の顔を見守った。
17[#「17」は縦中横]
主君も主君将軍家の城を、焼打ちにしようというのであるから、これが普通の幕臣なら、カッと逆上《のぼせ》るに違いない。
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