ばらく黙っていた。蒸されるような沈黙であった。
「おおそうそう、杉の手箱をお預かりしてあったはず、お持ち帰りになられるかな」やがて義哉はこう云って、ものしずかに立ち上りかけた。
「ハイ」と云ったが、周章《あわ》てて止め、「ご迷惑でないようでございましたら、その手箱はもう少々お預かりなされて下さいますよう」
「ははあ左様か、よろしゅうござる」
 この手箱がありさえしたら、これから度々この娘が、訪ねて来ないものではない。何と云っても美しい娘で、美人を見るということは、悪い気持のものではない。……これが義哉の心持だった。それで、承知したのであった。話の口が切れたので、すぐに義哉は追っかけて訊いた。
「由《よし》ありそうな杉の手箱、何が入れてありますかな?」
「さあ何でございましょうか」お錦は一向平気で云った。「戴いたものでございますの」
「ほほう左様で、誰人《どなた》からな?」
「ハイ、見知らぬ老人から」
「見知らぬ老人から? これは不思議」
「ほんとに不思議でございますの。……昨夜あれから参りました、瓦町《かわらまち》の古家で、気味の悪い老人から、戴いたものでございます」
「ふうむ」と云っ
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