な。覚えていろよ、いい事アねえぞ」
「覚えているとも」とトン公は笑い、「悪いことは云わねえ帰った方がいい。そうだ足下の明るいうちにね」
 云い捲くられた釜無しの文は、縹緻《きりょう》を下げて帰ることになった。
 足音が門口から消えた時、「爺つあん」は深い溜息をした。
「……すんでに瞞される所だった。トン公、ほんとに有難うよ」
「ナーニ」と云ったがトン公は、頭の繃帯を手でさぐり、「どうもいけねえ、まだ痛えや。……だがね「爺つあん」実の所はね、紫錦さんは浮雲《あぶね》えんだよ」
「え、どうしてだい? どうして浮雲えな?」
「源公の野郎ヤケになって、江戸中探しているらしいんだ。それで今夜もぶつかったって訳さ。この頭の傷だって、つまり何だ、その時の土産《みやげ》さ。……あれいけねえ、まだ痛えや!」怨めしそうな顔をした。

14[#「14」は縦中横]

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※[#歌記号、1−3−28]よし足引の山めぐり、四季のながめも面白や、梅が笑えば柳が招く、風のまにまに早蕨《さわらび》の、手を引きそうて弥生《やよい》山……
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 その翌日の午後であったが、小堀義哉《
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