ひとつ子供を取り代えてやろうと。これは親の愛からだ。お前がわし[#「わし」に傍点]の子である以上は、一生出世はしないだろう。しかし伊丹屋の子となったら、どんな栄華にでも耽ることが出来る。そこで、わし[#「わし」に傍点]は取り代えた。勿論伊丹屋では気が付かず、お染と名を付けて寵愛した。そうして本当の伊丹屋の子は、わし[#「わし」に傍点]らの手で育てようとした。ところが二日目に死んでしまった。さて万事旨く行った。ところが神様の罰があたり、わし[#「わし」に傍点]は迂闊《うっか》りその秘密を「釜無《かまなし》の文《ぶん》」めに話してしまった。文は宝壺をよこせと云った。だがわし[#「わし」に傍点]は承知しなかった。そこで文めは仇をした。お前――即ち伊丹屋のお染を、鼬《いたち》を使って盗み出し、そうしてお前を女太夫に仕込み、そうしてわし[#「わし」に傍点]から身を隠した。わし[#「わし」に傍点]はどんなに探したろう。だが容易に目付《めつ》からなかった。長い年月が過ぎ去った。と、偶然お前に会った。するとどうだろうわし[#「わし」に傍点]の子は、また伊丹屋の養女となって立派に暮らしているではないか。
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