け》での話しをした。
「恐ろしい壺でございますことね。で、その壺はどうなさいました」
「伯爵様がお壊《こわ》しなされた。別に変事も起らなかった。ところで地図はどうしたえ?」
「壺に附いていた地図ですね。……ええここにございますわ」お錦は手文庫から取り出した。
「こんな物は焼いた方がいい」
延太夫は火をつけた。すると、火熱に暖められた地図の面《おもて》へ文字《もんじ》が浮かんだ。
そこで急いで火を吹き消した。
こう紙面には記されてあった。
「紫錦《しきん》よ、わし[#「わし」に傍点]は「爺《とっ》つあん」だ。これはお前への遺言だ。そうしてお前はわし[#「わし」に傍点]の子だ。わし[#「わし」に傍点]の本名は藤九郎だ。その頃わし[#「わし」に傍点]は悪党だった。わし[#「わし」に傍点]は宝壺を盗み出した。だが、ちっとも幸福ではなかった。その後|釜無《かまなし》の中洲へ埋めた。そこで改めてお前へ云う、お前はわし[#「わし」に傍点]の実の子だと。女房お半の産んだ子だと。その頃わし[#「わし」に傍点]は諏訪にいた。伊丹屋の借家に住んでいた。その時伊丹屋でも女の子を産んだ。そこで俺は考えた。
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