る。ある夜壺は音楽を奏した。これが勝頼にはこんなように聞こえた。
「天目山《てんもくざん》へ埋めろ! 天目山へ埋めろ!」
 さすがの勝頼も気味悪くなり、侍臣《じしん》をして天目山へ埋めさせた。
 しかし祟りはそればかりではなかった。
 天正《てんしょう》十年三月における、武田と織田との合戦で、勝頼は散々に敗北した。で止むを得ず僅《わずか》の部下と共に天目山へ立籠った。すると、にわかに鳴動が起こり、壺が地中から舞い上り、同時に天地は晦冥《かいめい》となった。
 勝頼はその間に切腹し、全く武田家は亡びてしまった。
「と、こういう伝説でございますので。……その後手に入れた綱吉《つなよし》公が、将軍職になりましたし、柳沢侯が出世しましたので、幸福の象徴となりましたが、しかし将軍綱吉侯は――大きな声では云えませんが、奥方の寝室《ねや》の中で暗殺され、つづいて柳沢侯は失脚しました。やはりこの壺はそういう意味から云うと、悪運の壺なのでございます」[#「でございます」」は底本では「でございます」]

29[#「29」は縦中横]

 家へ帰って来た延太夫は、早速女房のお錦を呼んだ。
 そうして勝家《かつ
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