とを云った。
「ここに小さな壺がある。が、普通の壺ではない。摩訶不思議《まかふしぎ》の仙人壺だ。そうして俺は仙人だ、嘘だと思うなら見ているがいい。この壺の中へ飛び込んで見せる」
 それから老人は立ち上り、一|丈《じょう》あまりも飛び上った。と、体が細まりくびれ[#「くびれ」に傍点]、煙のように朦朧となり、やがてあたかも尾を引くように、壺の中に入って行った。
「見事々々!」と樵夫どもは、手を叩いて喝采したが、物慾の少ない彼らだったので、そのままそこを立ち去った。
 よろこんだのは金兵衛で「こいつを香具師《やし》に売ってやろう。うん、一釜《ひとかま》起こせるかもしれねえ」壺を抱えて山を下った。
 さてその晩|旅籠《はたご》へ泊まると、早速怪奇が行なわれた。壺が音楽を奏したのである。金兵衛はとうとう発狂した。旅籠の主人は仰天し、この壺を役人へ手渡した。それを聞いたのが勝頼《かつより》で「面白い壺だ、持って来るがいい」
 で、その壺は勝頼の手で大事に保管されることになった。大豪《たいごう》の武田勝頼には、仙人壺も祟《たた》らなかったらしい。いやいや決してそうではなかった。壺は大いに祟ったのであ
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