ょうね?」
 鐘が谷の方で鳴り渡って、山尼の徒がそっちへ走って、そうしてそのまま大忙《おおいそが》しに、山を下って行ったことだけは、桔梗様にも解っていたが、その他のことは解らないのであった。
「わけの解らない連中なので、さあどこをさして行ったものやら」早熟《ませ》た口調で鯱丸が云う。
「ところで高蔵尼とおっしゃる方は、いいお方なのでございましょうね」
 芹沢の里の乱闘の際、突然高蔵尼に攫《さら》われて以来、そうしてこの土地へ来て以来、ただ親切にあつかわれるばかりで、高蔵尼という尼様の素性は、いまだに桔梗様には解らないのであった。
「口小言のうるさい婆さまで」鯱丸は依然として、口が悪い。「でも結構な婆様で」今度は鯱丸は褒めるのであった。
「それにしてもここの人達は、何をして生活《くら》しているのでしょう?」
 一月あまり住居してみたが、桔梗様には山尼の生活が、どうにも胸に落ちないのであった。毎朝毎晩看経をするのは、尼としては当然のことであったが、突然一同が打ち揃って、どこへともなく行くことがあった。托鉢に行くのだとも思われたが、そうでもないようなところもある。規律はいかにも整然としていて
前へ 次へ
全229ページ中224ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング