山駕籠を囲んだ同勢が、同じ方角へ進んで行く。冷泉華子の一隊である。
 と、右側の谷の上を、同じような同勢が辿っている。北王子妙子の一隊である。
「いや面白い旅行だわい」こう云ったのは一式小一郎で、愉快そうな笑いを漂わせている。「危機一髪、もういけまい。こう思った時現われたのが、あの田安家の勢なのだからなあ。それに牽制されたので、一ツ橋の連中にも討って取られず、両家の者に左右を守られ、こんな塩梅《あんばい》に旅が出来る。どうも浮世って皮肉なものだ」
「結構な皮肉でございます。時々こういう皮肉があるので、ほんとに私達は助かります」
 こう云ったのは君江である。君江の様子も愉快そうである。
「一ツ橋勢が谷へ下り、俺達を討って取ろうとすれば、田安家の連中が下りて来て、この俺達を救ってくれる。この俺達が谷を上り、田安の連中と一緒になろうとすれば、一ツ橋勢が追っかけて来る。そこでどうでも俺達とすれば、いつまでもこうやって谷の底を、辿って行かなければならないのさ」
「面白い身の上でございますよ。強い二つの大きな国に押し付けられておりながら、威張り巻くっている小さな国、それが私達でございますよ」
「俺
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