って尋常な尼僧ではない。一種特別の放浪者だ。不思議な業さえ心得ている。兇暴な性質も持っている。……ところで居場所だが解らない。天幕生活をしているのでな。もっとも大略《おおよそ》の見当はつく。秩父山中の桐窪にいよう。……これ以上は教えられない」
そこで一式小一郎は、それだけの言葉を手頼りにして、桔梗様を探しに出て来たのであった。
手綱を引いて君江が行く。馬に揺られて小一郎が行く。懸巣《かけす》が林で啼いている。野の草が風に靡いている。
二人は旅をつづけて行く。
はたして一式小一郎は、山尼の居場所を突き止めて、ふたたび恋人の桔梗様を、取り返すことが出来るだろうか?
一つの森が現われた。と、その森の向こう側から、大勢の人声が聞こえて来た。
「はてな?」と耳を傾《かし》げた時には、風の吹き具合が変わったのだろう、もう話し声は聞こえなかった。それにも拘らず小一郎は、非常に不安の様子を見せた。話し声に聞き覚えがあったからである。
「とは云えまさか[#「まさか」に傍点]あの連中が」口の中で呟いた。「ナーニこの俺の聞き違いだろう」
いやいやそれは聞き違いではなかった。小一郎にとっては恐ろし
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