た桔梗様である。
フラフラフラフラと歩いて行く。
まるっきり意識などなさそうである。無我夢中でいるらしい。何か口の中で呟いている。
「どうしたのだろう? 解らない! ……切り合っているよ! 恐ろしい! ……妾はどうしたらいいのだろう? ……逃げなければならない! 逃げなければならない! ……」
フラフラフラフラと歩いて行く。
どこへ行こうとするのだろう? 自分にも解っていないらしい。どこへ行くのが至当なのだろう? 自分にも解っていないらしい。
館の方へ歩いて行く。裏門の方へ歩いて行く。
これこそ正気でない証拠である。
恐ろしい恐ろしい館ではないか! 彼女を捕えて苦しめた、敵の住んでいる館ではないか! それだのにそっちへ行こうとする。
フラフラフラフラと歩いて行く。
どうして誰もが止めないのだろう? 弁天松代はどうしているのか? やっぱり戦っているものと見える。
桔梗様はフラフラと歩いて行く。
とうとう裏門から入り込んだ。
ザ――ッ、ザ――ッと音がする。
滝の落ちている音である。
そっちへ桔梗様は歩いて行く。
「綺麗な滝! 落ちているねえ」
佇《たたず》んで
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