いくらか真面目になった。「人を助けに行くのだよ」
「人を助けに? 怪しいものさ」
「綺麗な綺麗な娘をね」
「ふうん、何んだか解るものか」
「そうして叱りに行くのだよ」
「だんだん解らなくなって来た」
「妾の家来でありながら、その妾を裏切って、よくないことをやっている、二人を叱りに行くのだよ。……鯱丸!」と俄然いかつくなった。
「船をお廻わし、陸の方へ! 街道の方へお近付け!」
「はい」と云ったが神妙であった。鯱丸はグ――ッと綱を引いた。ハタハタハタ、ハタハタハタと、方向が変えられた幾個の帆は風を孕んで靡いたが、筏船は素早く方向を変え、街道筋の方へ辷り出した。
 と、間もなく街道が――東海道の陸の影が、遙かにぼんやりと見えて来た。
「鯱丸」とまたも命令的に、「さあさあ松火《たいまつ》へ火をおつけ!」
 カチッ! と燧《ひうち》石の音がした。すぐにボ――ッと火が立った。鯱丸が松火を点したのである。
「およこし」と云ったが老婦人は、松火を取ると頭上へかざし、二、三度グルグルと渦を描いた。
 と、どうだろう、それに答えて、陸から松火の桃色の火が、一点ポッツリと見えたではないか。
 何者かそこに
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