すやら、存じませんでございます。どうぞ虐めないでくださいまし。どうぞ叔父様のお屋敷へ、お帰しなすってくださいまし」
両袖を顔へあてたのは、涙を見せまいとしたのだろう。やがて泣き声が洩れて来た。肩が細かく波を打つ、耳髱へかかった後毛《おくれげ》が、次第に顫えを増して来る。
三十四
しばらく見ていた冷泉華子は、舌打ちをすると突っ立った。取り上げたのは黄金の杖で、引きそばめると後退《あとしざ》りし、煮えている釜の横手まで、一気にスーッと引っ返した。
「なるほど!」
と云ったが凄じい声だ!
「なるほど、それほどの強情なら、殺されるまでも明かすまい。……女よ! お死に! 殺してあげよう! 嬲《なぶ》り殺しだ、まずこうだ!」
ジーンと不気味の音がした。杖を釜の中へ入れたのである。湯気が渦巻き立つ。それを貫いて斜《はす》かいに、黄金色の線が引かれている。すなわち黄金の杖である。そろそろとそれが引き上げられた。と杖の先が現われた。弧を描いてその先が、部屋の空間へ差し出された時、ポッツリと一滴水銀色の滴が、石畳の上へしたたった。ボーッと上がったのは煙りである。石畳へ出来たのは
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