らの薙《な》ぎの手だ、サ――ッとばかりに振り下ろした。すぐに起こったは悲鳴である。つづいて起こったは仆れる音! 一本の刀に脳天を割られ、一本の刀に肩を切られ、もう一本の脇差しに肋《あばら》を刎ねられた一ツ橋家の武士が、悲鳴を上げて仆れたのである。
「こんなものだよ!」と愉快そうな声! 弁天松代が云ったのである。「乗り越せ乗り越せ! さあお進み!」ポンと死骸を飛び越した。
「合点!」と同音! 六人の部下だ。これも死骸を飛び越して、タッ、タッ、タッ、タッと押し進んだ。
 群像は進んで行くのである。依然グルグル廻わるのである。
 蒼白いは桔梗様の顔である。月に向かって曝らされている。翻えるは桔梗様の袖である。蝙蝠《こうもり》が翼を振るようだ。
 手組輿の上の桔梗様は廻わされるままに廻わっている。生死のほどは解らない。されるままになっているのである。

        四十三

 ひた[#「ひた」に傍点]走るひた[#「ひた」に傍点]走る七福神組! 芹沢の里の方へひた[#「ひた」に傍点]走る! こうして首尾よく七福神組は、桔梗様を救うことが出来るだろうか。
 いやいやそれは出来そうもなかった。
 味方の一人を目前において、討って取られた一ツ橋家の武士達は、かえって怒りを発したと見える、四、五人一度に声を掛け合わせ、同時に猛然と飛びかかって来た。
 が、その結果は駄目であった。
 七福神組の六人が、一斉に上げた六本の太刀が、廻わりながらの薙ぎの手で、サ――ッと一度に下ろされた時、数声の悲鳴がすぐ起こり、つづいて仆れる音がした。
 四、五の死骸が野に転がり、その死骸から血が吹き出し、飛沫のように散った先が、煙りのように茫と霞み、月の光を蔽うたので、月が血煙りに暈《ぼか》されて、一瞬間赤く色を変え、まるで巨大な酸漿《ほおずき》が、空にかかったかと思われたが、それを肩にした弁天松代が、
「こんなものだよ、驚いたか! 七福神組の卍廻わり、そう甲斐|撫《な》でには破れない! 相手になろうよ、幾度でもかかれ! ……乗り越せ乗り越せ! さあ進め!」死骸を向こうへ飛び越した。
「オッと合点! さあ行こうぞ!」
 群像は、形を崩さずに、松代の後に従って、死骸を向こうへ飛び越した。
 左へ廻わる。右へ廻わる。そうして先へ進んで行く。
 次第次第に一ツ橋勢は、後へ後へと押されて行く。
 だがこの時背
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