廻わっている。ダラリと下がった両袖が、廻わるに連れて翻《ひるが》えり、風を孕んでハタハタと鳴る。蝙蝠《こうもり》が翼を振るようである。
背後《うしろ》には館が立っている。黒々と立っている態《さま》が、異国の魔塔を想わせる。
右手に煙っているものは、月光に暈《ぼか》された海である。
何んだろう、あれは、点々と、左手に見える赤いものは? 芹沢の里の燈火《ともしび》である。
依然行手には一ツ橋勢が、抜き身を揃えて並んでいる。
それらのものに囲まれた、深夜の広い野の上で、群像が廻わっているのである。
そうして先へ進むのである。
変わった見物《みもの》と云わざるを得ない。
と、松代が声を上げた。
「さあさあ右へお廻わりよ!」
群像は右へ廻わり出した。
「今度は左だ! 廻わったり!」
群像は左へ廻わり出した。
白刃が光る、足が揃う、群像がグルグル渦を巻く。
「お進みお進み、さあお進み!」弁天松代の指揮である。
廻わりながら群像は進み出した。
凛々《りり》しい松代の姿である。裾をキリキリと取り上げている。両袖を肩で結んでいる。深紅の蹴出《けだ》しから脛《はぎ》が洩れ、脛には血汐が着いている。たくし上げられた袖から抽《ぬ》きでて、二の腕まで腕が現われている。それにも血汐が着いている。手に握ったは白刃である。中段に構えて押し進む。
廻わる群像! 進む群像! 指揮をして走って行く弁天松代!
タッ、タッ、タッ、タッと押し進む。
一ツ橋家の武士たちが、胆を潰したのは当然と云えよう。全くこんな戦術は、かつて見たことも聞いたこともなかった。
切り込んで行こうにも行きようがない。取り抑えようにも抑えようがない。迂濶《うかつ》に切り込んで行ったが最後、六本の太刀の幾本かが、同時に落ち下るに相違ない。また抑えようとしたところで、群像の行動は素ばしっこい[#「ばしっこい」に傍点]、容易に抑えられるものではない。
多勢を頼んで遮ってはみたが、進みもならず一様に、後へ後へと引くばかりであった。
七福神組は進んで行く。一ツ橋勢は引き退く。
結果はどうなることだろう?
そうは云っても一ツ橋家の武士にも、全然勇士がないことはなかった。果然、一人、月光を刎ね、猛然と群像へ切り込んだ。だがその結果は無残であった。それと見て取った七福神組は、一斉に刀を振り上げたが、廻わりなが
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