角俺等の物語りの、謎解きをしようと出かけたというからこいつはこのまま信じるとして、真っ先にどこへ行くだろう? ……さあ真っ先にどこへゆくだろう?」
当然なことが思いついた。
「お縫様屋敷へ行くというものさ」
どうしたものか吹き出してしまった。
「行ったって何があるものか。大きな空家があるばかりさ」
で、こいつは投げ出すことにした。
「さてこの外にはどこへ行くな?」
雲を掴むようでわからない。
「こまったな、本当にこまった。……だが……」
というと考え込んだ。
「だが矢っぱり筋道をたぐろう。お縫様屋敷へ行ってみよう。何か手がかりが目つかるかもしれねえ」
半九郎スタスタあるき出した。
上野を廻ると上根岸、お縫様屋敷の前まで来た。
冬陽が黒塀にあたっている。あれにあれた屋敷である。屋根棟に烏《からす》がとまっている。生物といえばそれだけである。カラッと四方吹きさらしである。一軒の家も附近にはない。
「矢っ張り空家さ。何があるものか」
呟いたが半九郎念のためだ、グルリと屋敷を巡り出した。
「おっ」
と俄に立ちどまったのは[#「立ちどまったのは」は底本では「立ちとまったのは」
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