ように、衰死したかが不思議だというのさ」
「恋病《こいわずらい》だあね、それで死んだのさ」
「そうチョロッかに片付るなら、辻切の方だって片がつく、切りっぱなしで消えたんだとね。……だがそれだけでは済むまいぜ、俺等の商売からいく時はね」
「十年前の出来事じゃァねえか」
「ところがお前そうじゃァないんだ、俺等の仲間で競争的に、その謎解きにかかっているのさ」
「へえ、そいつァ物好きだなあ」岡八一寸眼を見張った。「初耳だよ、そんな話は」
「お前は一人で高くとまり、俺等とあんまりつきあわないからさ」
「それにしても暇の連中だなあ、この小忙しい浮世によ」
「そこで連中はいっているのさ。岡八兄貴なら解けるだろう。もし又こいつ[#「こいつ」に傍点]が解けねえようなら、岡八なんかとはいわせねえとね」
「えらく[#「えらく」に傍点]皆に憎まれたものだな」岡八ニヤリと笑ったが、どうしたものか膝を打った。それからヒョイと※[#「ぼう+臣+頁」、第4水準2−92−28]《おとがい》をしゃくった。「よし来た、それじゃァ解いてみせよう!」
「え、本当か! そいつァ豪勢だ!」
「しかも、きっと今日明日の中にな」

 
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