赤坂城の謀略
国枝史郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)正成《まさしげ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)七郎|正季《まさすえ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]
−−
一
(これは駄目だ)
と正成《まさしげ》は思った。
(兵糧が尽き水も尽きた。それに人数は僅か五百余人だ。然るに寄手《よせて》の勢と来ては、二十万人に余るだろう。それも笠置を落城させて、意気軒昂たる者共だ。しかも長期の策を執《と》り、この城を遠征めにしようとしている。とうてい籠城は覚束ない)
そこで、正成は将卒をあつめ、しみじみとした口調で申し渡した。
「この間は数箇度《すかど》の合戦に打ち勝ち、敵を亡ぼすこと数を知らず、正成くれぐれも有難く思うぞ。が、敵大勢なれば物の数ともせず、囲みを解いて去るべくも見えぬ。然るに城中はすでに食尽き、援兵《えんぺい》の来る望みもない。……元来天下の衆に先立ち
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