その反対に影法師が、先へ進んで行ってしまうと、暗い姿であった野の花が、鮮かに色と艶を甦生《よみがえ》らすからであった。
 こうして一行は進んで行ったが、一つの小さな林まで来た。
 と、その林の向こう側から、女の歌声が聞こえてきた。

 で、弦四郎の一行は、顔を互いに見合わせたが、眼を返すと木立の隙《ひま》から、歌声の来る方をすかして見た。
 被衣《かつぎ》を冠った一人の乙女を、十数人の娘達が、守護するように囲繞して、各自《めいめい》野花を手にかざして、歌いながらこっちへ歩いて来ていた。
「素晴らしい代物がやって来たぞ」
 額に瘤のある若者が、こう頓狂に声を上げた。
「醍醐殿々々々ご覧なされ、被衣を冠っているあの女が、白河戸郷の長をしている、将監の娘の小枝でございますよ」
「そうか」と弦四郎は小枝を見詰めた。
「遠眼でしかとは解らないが、いかさま美しい娘らしい。……が、何のために女ばかり揃って、こんな所へ来たのだろう」
 しかし弦四郎にはそんなことは、どうであろうと関係《かかわり》はなかった。
 弦四郎はすぐに計画を案じた。
(小枝を奪い取って人質としよう。白河戸郷を苦しめるのに、上越《
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