がら変な気持がするよ」
「覚明様は一面霊人、他面魔物にございますよ」
 こう怖そうに云ったのは、片眼潰れている若者であった。
「奇怪といえばもう一つある」
 弦四郎は云い云い首を傾《かし》げた。
「あの神殿も奇怪なものだ」
「…………」
 誰もが返辞をしなかった。
 誰も彼も弦四郎が言葉に出した、「神殿」というその言葉に、触れることを憚っているようであった。
「が、俺は覚明殿と約束をしたのさ。俺の力で白河戸郷を、没落させることが出来たなら、浪江殿をくれるか神殿の中へ入れるか、どっちかを果すという約束をな」
 しかし弦四郎がこう云っても、若者達は黙っていた。
 信用しないぞという様子なのである。
 一行は先へ進んで行く。
 同じように野からは陽炎が立ち、兎が草の間から飛び出したりした。
 一行の歩いて行く影法師が、野の花で絨毯を織っている、曠野の上へ黒々と落ちて、一行が進むに従って、影法師も先へ進んで行き、影法師が進んで行くにつれて、野の花がある時は暗くなり、またある時は明るくなった。すなわち影法師の落ちているところの、野の花は影法師に蔽われて、色と艶とを失って、暗い姿となるのであるが、
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