どの道を行ったか教えてくれ」
「へいへい」と云ったが首を下げて、老樵夫は弦四郎の笠の中を覗いた。人相を通してこの侍の人物を知ろうとするものらしい。しばらくの間は黙っていた。
 その態度がどうやら弦四郎には、腹立たしいものに思われたらしい。癇癪声で怒鳴るように云った。
「当方の申すことが解らぬか。唖者かそれとも聾者なのか! ……では改めてもう一度訊く。――旅の侍が通った筈だ。ここに三本の道がある。どの道を侍は通って行ったな」
「へい」と老樵夫は決心したように云った。
「細い道を通って参りました」
「おおそうか、細い道を行ったか。が、細い道は二本ある。どっちの細い道を通って行ったな?」
「へい」と老樵夫は妙な笑い方をしたが、
「この細い道を通って参りました」
 こう云って一本の道を指した。が、その道は茅野雄の通った、細い道とは異《ちが》っていた。
 しかし弦四郎には解るはずがなかった。
「おおそうか、この道を行ったか」
 ――で、ロクロク礼も云わず、四人の部下を従えて、その細い道を先へ進んだ。
 そうしてこれも長く延びた芒《すすき》に、間もなく蔽われて見えなくなった。
 一旦|隠《かく》れ
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