花が咲いている。鹿が断崖の頂きを駆け、鷹《たか》が松林で啼いている。鵙《もず》が木の枝で叫んでいるかと思うと、鶇《つぐみ》が藪でさえずっている。
四方八方険山であって、一所に滝が落ちていた。その滝のまわりを廻《めぐ》りながら、啼いているのは何の鳥であろう? 数十羽群れた岩燕であった。
高山の城下までつづいているはずの、峠路とも云えない細い道は、足の爪先からやまがた[#「やまがた」に傍点]をなして、曲がりくねって[#「くねって」に傍点]延びていた。昼の日があたっているからであろう。道の小石や大石が、キラキラと所々白く光った。
しかし、弦四郎と思われるような、人の姿は見えなかった。
(不思議だな、どうしたのであろう?)
宮川茅野雄は首を捻《ひね》ったが、ややあって苦い笑いをもらした。
(何も近くにいるのなら、矢文を射てよこすはずはない。遠くに隠れているのだろう。そこから矢文を射てよこしたのだ。そうしてそこから窺っているのだ)
それにしても戦国の時代ではなし、矢文を射ってよこすとは、すこし古風に過ぎるようだ。――こう思って茅野雄はおかしかった。
(弓矢で人を嚇すなんて、今時なら山賊
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