をするのが、私には大変好もしい。お蔭で指は細くもなり、滑らかにもなり白くもなった。節立った指などというものはどうにも私の嗜好に合わない)
その京助という若い手代は、どういう性質の男なのであろう?
決して悪人でないばかりか、正直で忠実で働き好きで、そうして綺麗好きの若者であった。ただ小心だということと、腕力のないということと、男性よりも女性を好んで、男性に対すると無口になるが、女性に対するとお喋舌《しゃべ》りになって、活き活きとしてくるという、そういう欠点があるばかりであった。
で、自然と松倉屋の主人の、勘右衛門に対しては不機嫌となるが、勘右衛門の女房のお菊に対すると、よきお小姓となるのであった。
ところで最近に京助にとって、面白くないことが起こってきた。
旗本の次男の杉次郎という武士が、女王様のように崇拝《すうはい》をしている、奥様の心をたぶらかして、奥様の心を引っ張り寄せて、愛人としての位置を掴んだかのように、京助に感じられたことであった。
(あの杉次郎という若侍は、どうやら奥様を甘言《かんげん》でまるめて、お金や物品《もの》を持ち出すらしい)
これが京助には面白くなかっ
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