仆して置いて、茅野雄は中から扉を閉じ、ガッシリと閂《かんぬき》を下ろしてしまった。
 ――で、今、洞窟の中にいるのであった。
 外から大勢の郷民達が、扉を叩いたり喚き声を上げたり、番人に向かって扉をあけるようにと、命じている声が塊《かた》まり、ワーンというように聞こえてきたが、番人は気絶をして仆れていた。なんの扉をあけることが出来よう。
 で、今のところ茅野雄も浪江も一時安全を保つことが出来た。
 とは云えいつまでも洞窟の中に、隠れていることは出来そうもなかった。食べ物だってないだろう。飲み水だってないだろう。
 しかしながら外へは出られなかった。出たが最後に二人ながら、兇暴になっている郷民達のために、私刑にされるに相違ないのであるから。
「そう、とうてい今のところ、外へ出ては行かれますまい。そう、それではともかくも、奥へ進んで参ることにしましょう」
 こう云うと茅野雄は奥へ向かって歩いた。
 と、浪江が囁くように云った。
「行く先に幾個《いくつ》か関門があります。そこには番人が守っております。……妾《わたくし》、先へ立って参りましょう。妾が声をかけましたら、番人達は扉をひらきましょう
前へ 次へ
全200ページ中174ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング