お化粧をして、お前の用事ならどんなことでも聞くが、俺の用事ならどんなことでも聞かない。……あんな奴には暇をくれるがよい! でなかったら店の方へ廻してよこせ、使って使ってコキ使って、働き者に仕立て上げてやろうに。……ところがお前はあいつが好きで、お小姓のように目をかけている! お前は若い女房の身分だ、小間使いばかりを使うがよい。女は女を使うがよい。若い男を小間使いにまぜて[#「まぜて」に傍点]、いい気になって使ってなどといると、間違いが起こらないものでもない! ……何もかも俺には気に入らない! ……が、まあまあよいとしよう。だんだんに直して貰うとしよう。が、それはよいとしても、あれだけ[#「あれだけ」に傍点]は返して貰わなければならない。あれは大変な品物だからな。お前が是非とも見たいというので、一時お前に預けたが、是非とも返して貰わなければならない。さあさあお返し、さあさあお返し! ……アッハッハッハッ、泣くことはないよ。ナーニお前を叱ってはいない。やはりお前は俺には可愛い。お泣きでないよ、お泣きでないよ! ――とこんなように嚇《おど》しつ賺《すか》しつ、今夜はどうでもお菊をとらえて、云
前へ
次へ
全200ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング