かな」
こう云ったのは半田伊十郎であった。
「ああそうだよ、丹生川平をさ」
「お立ち退きなさればよろしいのに」
「途方もないことを云うものではない。あれほどの宝とあれほどの女を、うっちゃることが出来るものか」
「それはまアさようでございましょうが」
「俺が内陣へ入りたがっている。――いやあの晩は入ろうとした――と云うことを覚明殿に見抜かれたのが、失敗だったよ」
「茅野雄も内陣へ入りたがっていたようで」
「だからこそあの晩洞窟の口へ、こっそり忍んでやって来たのさ」
「そこで我々が襲ったという訳で」
弦四郎の一行は歩いて行く。
「どうともして今度こそ白河戸郷を、退治る方法を講じなければならない」
まだ弦四郎はこういうように云った。
「で、出かけて来たのだがな」
「ともかく一応白河戸郷へ、潜入する必要がございますな」
「そのためこうやって出て来たのさ」
弦四郎達は大森林を出た。
と、美しい花の曠野が、依然として人の眼を奪うばかりに、弦四郎達の眼の前に拡がった。
灌木に隠れ、丘に隠れ、弦四郎達は先へ進んだ。
と、にわかに立ち止まり、弦四郎はグッと眼を見張った。
白河戸郷の方角か
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