しょうよ』と」
「ナーニ、そのくせ醍醐弦四郎めも、あの晩内陣へ入り込もうとして、洞窟の入り口まで行っていましたので。そこへ私が参りましたので、競争相手を斃《たお》すつもりで、この私へあのように、切ってかかったのでございますよ」
 二人は尚も彷徨《さまよ》って行った。
 と、一所から声々が聞こえた。
 木立がそこだけ隙をなして、日光の射している丘があったが、そこに無数の業病人達がいて、話をし合っているのであった。
 茅野雄と浪江とは隙《す》かして見た。
 顔に白布をかけている者、松葉杖を脇の下へかっ[#「かっ」に傍点]ている者、一本しかない一本の腕で、胸の辺りをガリガリと掻いている者、膝から両脚がもげているので、歩くことが出来ずに這い廻っている者、髪の毛が残らず抜けたために、老婆のように見える若い女、骨なしの子供、せむし[#「せむし」に傍点]の老人――いずれも人の世の惨苦者《さんくしゃ》であったが、信仰を失ってはいないと見えて、その動作にも話しぶりにも、穏かな沈着《おちつ》いたところがあった。
 せむし[#「せむし」に傍点]の老人が体を延ばして、石楠花《しゃくなげ》の花を折ろうとしたが、
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