がにじみ出ていた。しかし彼女は夢中だと見えて、枝つきの野茨を捨てようともせずに、血を流したままでひた走った。
 と、もう一人の侍女が仆れた。仆れた所に石があったと見える、それで後脳を打ったと見える、仆れたままで悲鳴を上げて、両手で後脳を抱えるようにして、ゴロゴロと地上を転がった。が、それでも飛び起きると、解けて乱れてバラバラになった、長い髪を背後《うしろ》へなびかせたままで、先へ先へとひた走った。
「オ――イ! オ――イ! オ――イ! オ――イ!」
 呼びながら侍女達は走って行く。
 こうして半里は走ったであろう、侍女達はすっかり疲労した。
 飛騨という山国へ別天地を創って、そこに住んでいる女達である。都会の華奢《きゃしゃ》な女などとは、体格においても著しく強く、曠野や山道を走ることにかけても、遥かに勝れてはいるのであったが、お嬢様の小枝を丹生川平の者に、誘拐されようとした時に、女ながらも命限りに、丹生川平の若者達と、争って充分|疲労《つかれ》ていた。その上に半里の道程を、死に物狂いに走って来たのである。疲労切ったのは当然と云えよう。
 とうとう侍女達は草の上へ坐って、慟哭の声を上げ出
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