の丘のなだらかな斜面は、蹄で蹴られて雲のように、ムラムラと上った砂煙りのために、一時全く蔽われたように見え、啼いていた小鳥の歌声も途絶え、飛び散って咲いていた草の花の、織り物のように鮮麗だった色も、砂煙りの奥へ消え込んでしまった。
 が、その時分には騎馬の一団は、森林の中を走っていた。
 いかに彼らが馬術に達し、熟練を極めていることか! 灌木があれば躍り越し、喬木があれば巡って進み、沼があれば岸を輪なり[#「なり」に傍点]に馳せ、網の目のように強靱の蔓が数間に渡って張られてあれば、得物で切り払って突破した。当然の所業《しわざ》ではあったけれども、何とその所作が敏捷で、かつ自在であることか!
 と、一団が雁行《がんこう》をなした。馬の首が前方を走っているところの、他の馬の尻に触れそうなほどにも、接近をして走っておりながらも、前の馬の走る邪魔をしない。
 と、一団が鶴翼《かくよく》をなした。宏大な森林を横へ拡がり、横隊をなして走らせて行く。無数の障碍物《しょうがいぶつ》を持ちながら、その障碍物を巧みに避《よ》けて、互いに呼び合うことによって、一定の間隔をいつも保ち、疾風のように走って行く。
前へ 次へ
全200ページ中118ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング