、そこで大音に、若者達へけしかける[#「けしかける」に傍点]ように云った。
「この武士を打ってお取りなされ、我ら小枝を奪ったのに対して、こ奴は邪魔立て致そうとしております! 我々の怨敵白河戸郷に、味方を致す人間と見えます! 女子どもを打ち捨ておかかりなされ!」
この言葉は、極めて効果的であった。
(白河戸郷に味方する奴なら、我らにとっては怨敵である! やれ! 逃がすな! 切り刻め!)と、云う感情を男達の心へ、一斉に理性なしに湧き起こさせたのであるから。
ワ――ッというような叫声が、九人の男から起こった時には、九人の若い侍女達が、地上へ抛《ほう》り出された時であり、九本の刀が夏の日の光に、氷柱《つらら》のように光った時であり、意外の出来事に驚いて、棒立ちに立った茅野雄の左右へ、男達の逼った時であった。
男達の凄じい殺気立った顔と、虐殺することを喜んでいるらしい、男達の悪鬼じみた[#「じみた」に傍点]態度とは、茅野雄をして口をひらかせて、事の真相を弁解させるべく、無駄であることを思わせた。
五人を切った宮川茅野雄
(こうなってはもういけない! 相手を切らなければこっちが切られる)
前へ
次へ
全200ページ中108ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング