が母の方へ向いて、おめもせずにこんなように云い出した時には、そういう赧らみはなくなっていた。
「ええお母様、そうなんですよ。女が背後《うしろ》についております。その人が私へそう云わせるのです。でもそればかりではありません、たといその人が背後《うしろ》にいなくとも、早晩私は同じようなことを、お母様に云い出したに相違ありません。ただ、あの人が私へ来たために、云い出すのが早くなったばかりなのです。……だってそうじゃアありませんか。私達の家は何んていうのでしょう。ガランとしていて寂しくて、陰惨としていて墓場のようです。その辺に沢山幽霊がいて、私達を見守ってでもいるようです。大きな屋台骨、暗い間取り、荒れ果てた庭、煤けた階段、陽の目さえ通さないじゃアありませんか。ここにじっとして坐っていると、私は滅入ってしまいそうです。……いえそれよりもっともっと[#「もっともっと」に傍点]、大事なことがあるのです。それはお母様とお父様なのです。まあどうでしょうお父様と来ては、年が年中|離座敷《はなれ》ばかりにいて一度として主屋《おもや》へはいらっしゃらない。一度として戸外へおいでにならない。庭へさえ出ないじゃ
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