仙介の後を見送り見送り、お京の側までやって来たが、お京の膝の上の人形を見ると、ギョッとしたように眼を躍らせ、すぐに取り上げて袖の中へ引き入れ、つかつかと家の方へ走って行った。

        七

 十二神《オチフルイ》貝十郎の邸の玄関へ、同心の佃三弥と連れ立ち、仙介が姿を現わしたのは、それから間もなくのことであり、二人の姿が邸の中へ消え、やがて邸から現われたのも、それから間もなくのことであり、十二神貝十郎がそれと続いて、邸から出て駕籠に乗り、品川にある和蘭《オランダ》客屋を、訪ねたのも間もなくのことであった。
 こうしてこの日は暮れてしまった。

 さて、いよいよ今日の日である。昨日から泊まり込んでいた大日坊は、この日もお島に祈祷をした。お島の衰弱はいちじるしく、放心状態になっていた。しかも心ではどうともして、この苦しみから遁《の》がれ出たいものと、あえぐがように願っていた。祈祷が終えると部屋から脱け出し、夢心地のように庭へ出たが、庭を脱けると当てもなく、両国の方へ歩いて行った。
(寮は妾《わたし》にはまるで地獄だ。あそこの空気は息苦しい。あそこの空気は寂しくて凄い。賑やかで楽
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