不思議な病気につき、私は探って知ったのだ。いや探らせて知ったのだ。その結果を吉雄殿に話し、吉雄殿からカランス殿に話し、カランス殿の力によって、そなたの身の上に振りかかっている、危難を助けていただくことにした。……あの薬売りの藤兵衛という男に、ああいうことを云わせたのも、この十二神《オチフルイ》貝十郎なのだ。安心して一切を委《まか》せるがよい。と云うのはこれからこの部屋の中へ、そなたの胆を奪うような、奇怪な出来事が起こるからだ。驚いて気絶などしないように」
「はい有難う存じます。厚くお礼を申し上げます」
――で、お島はまた辞儀をした。もうこの頃は今の時間にして、午前の一時を過ごしていた。お島に病気が起こる頃であった。見ればカランスは両手をもって、大きな黒布《くろぬの》を持っていた。あのスペインの闘牛師が、闘牛に向かって赤い布を、冠せようとして構え込む、ちょうどあのような構え方で、黒布を持ち構えているのであった。と、そういうカランスが、幸左衛門へ向かって云った。それを幸左衛門が通訳した。
「お島殿、カランス殿が仰せられる、鏡を一心にご覧なされと」
「はい」と素直にお島は云って、鏡の面を凝
前へ
次へ
全166ページ中67ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング