し》と軟弱と贈収賄と、好色の風潮ばかりを瀰漫《びまん》させておる。……老中、若年寄、大目附、内閣は組織されていても、田沼一人に掣肘《せいちゅう》されて、政治の実は行われていない。……こういう時世には私のような男が、一人ぐらい出る必要がある。お父上が老練と家柄と、穏健と徳望とを基にして、老中筆頭という高官にあって、田沼の横暴を抑えたのを、私は年若と無位無官と、過激と権謀術数と、ある意味における暴力とを基とし、表面には立たず裏面にいて田沼の横暴を膺懲《ようちょう》するのだ。……私のような人間も必要だ」
「必要の段ではございません。大いに必要でございます。でありますから世間では、殿様のことをいつとはなしに『館林様』とこのように申して、恐ろしい、神のような、救世主のような、そういう人物に空想し、尊び敬い懐しんでおります。……がしかし殿にはどう遊ばしましますので? これからどこへいらせられますので?」
「もう用事は済んだのだ。……証拠を捉えようと企んだ仕事が、今、成功したのだからな。で家へ帰ってもいいのだ。がしかし私は笑ってやりたい。で、もう少し行くことにしよう」
「あの行列の後をつけて?」
「
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