ちが似ているところから、新八郎の心を引くこととなり、新八郎はお品と睦んだ。がどうだろうそのお品も、二、三日前に松本伊豆守へ、用人の手から引き上げられてしまった。小間使いという名義の下に、どうやら妾にされたようであった。
 お篠は派手な性質で、贅沢することが出来るのだったら、自分から進んで貴顕権門の、妾になるような女であった。
 しかしお品の方はそうではなかった。こまやか[#「こまやか」に傍点]なつつましい情緒を持ち、ささやかな欲望に満足し、愛する男を一本気に愛する。――そう云ったような性質の女であった。
 でお篠が自分を見捨てて権門の妾になったという、そういうことを知った時、新八郎は憎悪を感じた。
 しかしお品が同じ身の上になったと、お品の母親によって聞かされた時、新八郎は可哀そうなと思った。が、どっちみち新八郎の心は、慰めのないものとなったのである。
 そういう新八郎の眼の前に、お高祖頭巾を冠った女が、今忽然と現われて、謎めいた言葉をかけたのである。
(この女は何者なのであろう? ……どうして俺の身の上や、お品やお篠の身の上について、見通しのようなことを云うのであろう?)
 疑惑を持
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