分で、肝心の役より蔵前の札差しなどと、吉原へ行って花魁《おいらん》を買ったり、蜀山人や宿屋飯盛などと、戯作や詩文の話をしたりして、暮らす日の方が多いのだ。ところで丸田屋は俳人なので、かなり以前から懇意にしていて、我輩が名古屋へ来るごとに、立ち寄っては話し合っていた。で今年もやって来たのさ。そうして大野の潮湯治場の、丸田屋の夏別荘へも一再ならず、客としてこれまでも来たことがある。で、今年もやって来たのさ。
「私などよりも館林様こそ、どうして丸田屋の夏別荘などへ、おこしなされたのでございますか!」我輩はこう云って逆襲してやった。
「俺は部屋住みで自由の身分だ。それに天下に知己《しりあい》がある。どこの何者を訪ねようと、少しも不思議はないではないか」
「これは御意《ぎょい》にございます」我輩は心から頷《うなず》いて云った。
 と云うのはこの人は将軍家の遠縁、元の老中の筆頭の、松平右近将監武元卿の庶子で、英俊で豪邁な人物で、隠れた社会政策家で、博徒や無頼漢や盗賊の群をさえ、手下にして使用するかと思うと、御三家や御三卿のご連枝方と、膝組みで話をすることだって出来る――そういう人物であるのだからな
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