いている。眼が大きくひらいている。
「ああ、あなた猪之助さんね。……どうなさいました、匕首など持って。……」
「…………」
静が動を制したらしい。猪之助は呆然として突っ立っていた。
地下室は決して暗くはなかった。
明るい燈火《ともしび》に照らされて、その地下室の上にある部屋――隼二郎の部屋の舶来の、いろいろの外科の道具よりも、もっといろいろの外科の道具が、卓や棚に備えつけられてあった。そうしてその地下室の一所に、立派な柩が二つ置かれてあり、その中に二つの骸骨が研究材料のように置かれてあった。
そうしてその側の机によって、庭に騒ぎなどあろうとも知らず、隼二郎が手紙を読んでいた。それは古びた手紙であって、諸人接待の日が来るごとに、読むことに決めている手紙であった。
「弟よ、私は自殺をする。私は家を興そうとして、物質ばかりに齷齪《あくせく》した。そうしてそのため二人の人をさえ殺した。一人は大金を持っていたからだ。一人は私の犯罪を知って、恐喝をしに来たからだ。自責のために私は死ぬ。私が縊死をした松の木の下を、試みに掘って見るがよい。二つの骸骨が出るであろう。私の殺した二人の人の骨だ。
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