る、そういう蘭医達の家々で見かける、外科の道具類が置いてあり、書棚には書物が詰めてあった。
その部屋に隼二郎がいないのである。では隣室へでも行ったのであろうか? いやその部屋は四方壁で、出入り口は一つしか附いていなかった。窓はあったが閉ざされていた。そうして一つだけの出入り口からは、お豊が出て行ったばかりであって、隼二郎は出ては行かなかった。それは貝十郎も見て知っていた。
(これはいったいどうしたことだ)
八
しかし貝十郎は部屋の中へはいって、隼二郎を探そうとはしなかった。この時またも庭の方から、女と男の叫び声が、逼迫して聞こえて来たからであった。で、貝十郎は飛び出して行った。月光の中でお豊と猪之助とが――諸人接待の馳走の席で、憎々しい反抗的態度と言葉とで、征矢野家の先代の悪口を、憚らず云っていたごろつき[#「ごろつき」に傍点]のような男――その猪之助とが格闘していた。と、前方から一つの人影が、二人目がけて走って来た。
「鏡ちゃん! いいところへ! 早く来ておくれ!」
「姉さん! あぶない! ……おのれ猪之助!」
「何を、こいつら! 邪魔をするな!」
二人の格
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