ていて、その隠し場所を歌へ詠《よ》み込み、機嫌のよい時に一人で歌って、楽しんでいたということです。そうして女房だけへは云ったそうです。『京一郎が二十五にでもなり、俺の事が官から忘れられた頃、その財産を取り出して、昔のような豪快な、海の上の生活をやることにしよう』と。……そういう秘密の歌のことを、どうして館林様が知ったものか――ああいう叡智《えいち》のお方だから、どこからかお知りなされたのであろう。――秘密の歌の前半まで知って、後へつづく歌を知ろうとなされた。と云って嘉右衛門に強いて訊いても、剛愎の嘉右衛門が話すわけはない。伜の京一郎から訊かせたら、親子の情で話すだろう。……そこで手下の六人男と謀り、京一郎を玉にしたのでした。……あの時の喧嘩はカラクリなのでした。お蝶――女勘助の家へ――あの家は彼らの巣だったのでした。……逃げ込ませようためのカラクリだったのでした。それからの事はお話しなくとも推量する事が出来ましょう」

    木曽の旧家


        一

「あれーッ」
 と女の悲鳴が聞こえた。貝十郎は走って行った。森の中で若い美しい娘が、二、三人の男に襲われていた。しかし貝十
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