った心持ちからか、丁寧《ていねい》に手入れされていた。
 鋭い眼、食いしばったような口、大資本家型の猶太《ユダヤ》鼻、嘉右衛門はそういう顔をしていたが、右のこめかみに拇指《おやゆび》大の痣《あざ》が紫がかった黒い色に、気味悪く染め出されているために、不吉な人相をなしていた。長身であり肥大であった。で体格は立派なのであった。
 そういう彼と向かい合って、同じような椅子に腰をかけている、三十五、六歳の武士があったが、他ならぬ十二神《オチフルイ》貝十郎であった。
 その二人を取り巻いて、床の上や壁の面に、雑然と掛けられ置かれてある品の、何んと異様であることか。望遠鏡があり帆綱があり、羅針盤があり櫂《かい》があり、拳銃があり洋刀があり、異国船の模型があり、黄色く色づいている龍骨があり、地球儀があり、天気験器《ウェールガラス》があり、写真器《ドンクルガラス》がありホクトメートルがあった。
 壁に添ってハンモックが釣るされてあったが、そこには、人間が寝ていずに、和蘭《オランダ》あたりの船長でも着そうな、洋服が丸めて置いてあった。
 が、そういう品々は、十数年間人の手によって、手入れをされたことがな
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