「紅玉《エルビー》、紅玉《エルビー》、紅玉《エルビー》!」と……
しかし、女はもう二度とは、振り返ろうとはしなかった。支那服を纒った肥大漢の、しかも老人に寄り添ったまま、その老人に手を引かれ、悠々と歩いて行くのであった。
すると、その時、行手から、巨大な一台の自動車が、老人の前まで走って来た。それと見た老人は手を挙げて止まれと自動車に合図をした。そして自動車が止まるのを待って、女を助けて乗らせて置いて、やがて自分も乗り移った。
その時ようやく張教仁は、自動車の側まで馳せ寄ったが、そのままヒラリと飛び乗った。
自動車はすぐに動き出した。扉がハタと閉ざされた。
「紅玉《エルビー》!」
と息づまる大声で、張教仁は呼びながら、自動車の中を見廻した。
車内には人影は一つもない!
「こりゃいったいどうしたんだ!」
彼は魘《うな》された人のように、押し詰められた声で叫ぶと共に、やにわに扉《ドア》へ飛び付いたが、外から鍵をかけたと見えて、一寸も動こうとはしなかった。
その時、今まで点もっていた、車内の電燈がフッと消えて、忽ち車内は暗黒になった。
暗黒の自動車は月光の下を、どこまでもど
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