に感慨に沈みながら、トボトボと道を歩いて行った。こうしてしばらく歩いてから、何気なく彼は顔を上げて、行手を透かして眺めると、五間ほどの先を男女の者が、親しそうに肩を並べながら、ずんずん先へ歩いて行く。
後ろ姿ではあるが、夜目ではあるが、先へ歩いて行く男女のうち、女の方はどう見直しても、紅玉《エルビー》の姿に相違ない。
張教仁はうしろから、思わず声高に呼びかけた。
「紅玉《エルビー》、紅玉《エルビー》、おお紅玉《エルビー》!」
すると女は振り返った。そして歯を見せて笑ったが、そのままずんずん歩いて行く。振り返って笑った女の顔は、やっぱり紅玉《エルビー》に相違ない。張教仁はそれと知ると、嬉しさに胸をドキドキさせ、女に追い付こうと走り出した。しかしどのように走っても、不思議なことには双方の距離はいつも五間余りを隔てている。しかも先方の男女の者は、どのように張教仁が走っても、それに対抗して走ろうともせず、いつも悠々と歩くのであった。
張教仁の肉体は次第次第に疲労《つか》れて来た。今は呼吸《いき》さえ困難である。それだのに尚も張教仁は全力を挙げて走っている。そうして連呼をつづけている。
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