でも民党の有力者が殺された。そうかと思うと北方では、張作霖《ちょうさくりん》の将士が殺された。
誰も彼も全く同一の、不思議な殺され方で死ぬのであった。すなわち眼に見えない何者かが、眼に見えない人の呼ぶ方へ、眼に見えない力で引っ張って行く。そして行衛《ゆくえ》が失われる。そして翌日は九分九厘まで大道へ屍骸を晒らすのであった。
こういう奇怪の殺人が、頻々と行われるそのうちに、北京童《ペキンわらべ》の口からして次のような詩《うた》がうたわれるようになった。
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古木天を侵して日|已《すで》に沈む
天下の英雄寧ろ幾人ぞ
此の閣何人か是れ主人
巨魁来巨魁来巨魁来
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北京を振り出しに、この詩は、田舎へまでも拡がった。中華民国の津々浦々で、唄うともなく童の口から、口癖のように唄われるのであった。
古事に詳しい老人達は、訳の解らないこの詩の意味を、昔に照らして考えては見たがどういう意味だか解らなかった。
十一
それは明月の夜であった。金雀子街の道に添うてすくすくと立っている梧桐の木には、夜目にも美しい紫の花が、梵鐘《ぼんしょう》
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