箱がございます。幾代前からか知りませんが私の家に伝わった鉄の手箱でございまして中には解らない昔の文字で何かを記した羊皮紙があると父母が申しておりました。そしてこの箱さえ持っていればどんな危難でも遁がれられると云って幼少《ちいさい》時から肌身放さず持たせられていたのでございますが、これをあなたに差し上げますからどうぞお助けくださいまし」と。私は可哀そうになりました。で私は娘に云いました。「私が助けてあげますからちっとも心配はいりません」と。そして私はその翌日乙女を私の馬車に乗せて堂々と王宮からつれ出しました。幸い誰にも咎められず英国大使館へ馬車を着け大使に乙女を任せて置いて妾は王宮へ取って返して乙女から貰った鉄の手箱を何気なく開けて見ますると、古代|回鶻《ウイグル》語で記された羅布《ロブ》の沙漠の秘密の謎があらわれて来たではありませんか。そこで私はその箱を握ってすぐに宮中を抜け出しました。皇帝の命婦を逃がしてやった罪の発覚を恐れたよりも、羊皮紙に書かれた秘密の謎のその価値のあまりに大きいのに驚いたからでございます。それから回鶻《ウイグル》語の暗示に任かせ沙漠へ来たというものです。そして私
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